救世日記

入門書

2023.12.24

入門書というものが巷では溢れているそうですね。

「やさしくはじめる」だとか「本当にわかる」だとか「イチから」だとか「ゼロから」だとか、そういう言葉が頭についた本が書店の棚に置かれている現代は読者が舐められている時代である。

このような読者を舐め腐っている本は入門書と言われており、一般市民の人間にえらくありがたがられている。しかしそこの人、ちょっと待っていただきたい。入門書の著者というものは大抵専門家の先生さまである。そういった知識を豊かに持っている人間が、知識のない人間のレベルに合わせながら知識を売っている。これはとても悪意のある行為だと言える。そもそも知識というのは商品ではなく、自由に手に入れたり、失くしたりできるものである。しかし、通貨が発明され世界が虚構の価値で蔓延してから知識の売買が始まってしまった。経済社会の金銭的価値に惑わされ、知ることの悦びを忘れたあぁ現代人たちよ!入門書を買う前に怒れ!

こういった事情があるので、「何も知らねぇからってバカにしやがって。しかも一冊2000円だぁ?ぼったくりじゃねえか!」と私が思ってしまうのも無理のないことだと言える。しかし、我々のような人間が独学で勉強をしようとする時に入門書に頼ってしまうのは仕方がないことだろう。なのでみなさん、入門書を買うときは以下のような手順に従って買っていただきたい。

まず入門書を買うために本屋に向かいましょう。クリーム色の壁をした二階建ての本屋です。あなたが欲しい本は2階のフロアにあります。その本の前に立てば、こちらを過小評価してくるタイトルと無駄に華やかなデザインで必ずあなたを馬鹿にしてきます。あなたはすぐに頭に血がのぼり、怒りのあまり足を踏み鳴らし腕を振り回す。そのうちに気持ちが晴れてくるので本を取りレジに向かいましょう。するとそこには最大の敵がいます。店員です。

あなたがレジで入門書を会計しようとするとき店員はこのように思っていることだろう。「あー、こいつこの本で勉強始めようとしてるんだ。まぁ三日も経てば飽きて部屋の隅にほっぽりおくに違いない。」店員は私の顔をチラリと見て憐れむような表情を浮かべる。屈辱だ。なぜ知識を得ようとするだけでこんな悔しい思いをしなければいけないのか。

手早く会計を済ませ、逃げるように本屋を出る。怒りで熱くなった顔を、昼下がりの冷たい風が優しく包む。入門書が入っている包み袋が重く感じる。家までの帰路は遠い。

さて、知識を得る大変さ、不条理、みなさまにもわかってもらえたことでしょう。これにて「初めてでもわかる!入門書の買い方講座」を終了したいと思います。では!