林原めぐみ
2025.11.30
気を確かに持って! 頭の中で響く声はcv林原めぐみ。どうにかしてこの現実を打開しようと試行錯誤してきたけれど、苦悶の末に生まれたものはこの一言と、有名声優の名前だけだった。
一つ悪いところがあるとするならば、それは街の人々の顔つきだろうと思う。私がこの街に来てもう二十余年。慣れ親しんだ街並みは、日常を象徴する舞台背景として私の心を曇らしている。
この街の住民はいつの時代においても、私にとって見知らぬ人々の群れであった。そこに浮かんでくる顔はただ窪んでいたり、出っ張っていたりするだけで自分を支えてくれるものは何一つない。そういった無味乾燥なものに囲まれて私は生きてきた。悲劇的に語ってみせるならそう表現することもできるでしょう。
しかし、いくら頭の中で悲劇の主人公の設定を練ってみても、私の人生とはなんの関係もない。そのことに気づく時には、私の中の憎悪は取り返しのつかないところまで肥大化していた。
今すれ違った奴が私の人生にとって重要な登場人物なのかもしれない。そんな期待は絶望の裏返しでもあり、私の目は鋭く尖り、街ゆく人を睨みつけていく。
なぜお前はそんなにも無関心な顔でいられるんだ?悲劇の主人公様がここにいるのに。心地いい台詞で、私の素晴らしい脚本を進めてくれるはずじゃないのか?なのに、どうしてそんなつまらない顔をしている?なぜ?
よくない傾向だと強く思う。なので私は林原めぐみを召喚する。あの人の声が聞こえている限り、私は自分を俯瞰できているのだと感じる。だから今日も祈る。気を確かに持って!その声がどこかから聞こえてくることを願って。