救世日記

天使とダンス

2023.2.22

私だってミーハーになりたかった。

ドラマの主題歌を口ずさんで、流行りのダンスを踊る。周りの人と同じステップを踏んで、自然に微笑む。それができればどれだけ楽だったことか。

でも私はドラマを見たこともないし、笑顔は下手だし、そもそもダンスが踊れない。 ミラーボールは燦々と輝き、固まった私を照らす。

クソ野郎!投げたブーツがミラーボールに直撃し、ダンスホールは暗闇に包まれる。静寂の中で私は震える。

もういいや。どうでもいいや。私は翼が生えているので屋上にのぼる。そして飛ぶ!大丈夫、なぜなら私には翼があるから!あれ、なんでだ!翼がねぇじゃねぇか!?死を覚悟して目を瞑る。

なんとその時!天使が!!瞼の裏側に!!!

純白の羽根が閃光のように眩く。全身に感じる重力がゆるりと軽くなる。天使と目が合う。純白のドレス。微笑み。そうか、そうやって踊ればよかったのか。

私は天使と手を取り、空にステップを踏む。1,2 1,2 大丈夫。足はもつれてるけどちゃんと踊れてる。ちゃんと笑えてる!

同じように天使も笑い、踊り、歌う。私も笑い、踊り、歌う。気づけば私たちの決死のダイブは、終幕のステップで着地する。空は青く、太陽のミラーボールは私たちを照らしていた。