歩き方
2023.8.14
歩き方の正解とはなんなのでしょうか。
右足出して、次に左足を出す。この行為を繰り返すこと。それが歩くということなのでしょう。しかし、そのことのなんと難しいことか!
もちろん、この”難しい”とは歩くことが不可能だというわけではなく、歩くことに安心感を得たことがないという意味です。足の出し方、歩幅、背筋の伸ばし方、腕の振り方・・・などなど。どれ一つとっても正解がわからない。
正解を知ろうとして周囲の人の歩き方をみてみると、そこには一切の躊躇いもなく足を動かす人々がいる。グングンと歩き進める人々の影の中で私は絶望する。なんだ、答えを知らなかったのは私だけだったのか。仲間外れにされていた私は、さぞ正解を知っているような顔をして歩くふりをする。
そんな私の歩き方をみて、馬鹿にしているのだろう。嘲笑しているのだろう。そう思い込めば思い込むほど、足はぎこちなく動き、体は硬く縮み上がる。頼む!馬鹿にしないでくれ!誰も私をみないでくれ!
歩きつかれた私は立ち止まる。後ろに伸びた影が、不恰好な私を映し出す。
そもそも正解なんてないのかもしれない。誰も歩き方なんて気にしてないのかもしれない。そうだとしても私の不安と疑念は消えることはない。私の歩く姿を私だけが見つめている。私以外誰もいない道で、正解を探すために私は歩く。次の一歩が正解だとは信じないまま、私は歩く。